プロへの第一歩 実習編

新入社員研修を終了した私は、車両工場に実習生として配置されて以降、鉄道の基礎知識や労働災害防止、工具取扱の教育を受けてきました。

教育課程も後半になってくると、現場実習が始まります。

いよいよ足を踏み入れたことのない検修作業の最前線で、電車に触る現場実習が始まります。

洗礼を受ける

現場実習開始初日は上司に連れられ、構内を移動してとある場所に向かいました。そこは・・・「台車検修」の現場でした。

台車とは・・・鉄道車両走らせるための重要部品。フレーム(台枠)に車輪、軸ばね、軸箱、空気ばね、ブレーキから構成。自動車でいう足回り部品が台車に当てはまり、モーター付の台車も存在。

台車検修を統括する長の元へあいさつに向かうと、所長とは別な管理者の方が出てきました。

その管理者(以下親分)はいかつい風貌で、肌は日焼けした色黒で熊のような体格でした。腕には金のロレックスがキラキラ輝いていました。そして腹に響く声で「おう!よく来たな」と大きく一言

「今日からお世話になる、○○とtmkです」と教育部門の上司が紹介してくれました。二人揃って「お願いします」とあいさつしたら。

「声が小さいんじゃ!もっとシャキッとせえ!」と言われ背筋がピーンとなりました。親分から檄を飛ばされて、固まる私と同僚。

内心「現場もとんでもない人だらけじゃないか」と思っているのでした。

そしたら「あとはよろしくお願いします」と教育部門の上司はその場を後にしていきました。上司のそそくさと去る様子から、これはもしかしたらはずれ引いたなと感じたのは私だけではなく、もう一人の同僚もきっと思っていたことでしょう。

親分から「これから所長の挨拶と、現場案内してやっから」と言われるがままに新人2人はついていくのでした。

所長の挨拶も簡単に済ませると、早速その上司に連れられて工場の中を見学しに行きます

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実習開始

早速親分に連れられて、検修現場の説明を聞きながら注意事項や業務内容を教えてもらいます。

工場の中は機械や人が休む間もなく動き続けていて、台車を運ぶクレーン装置もせわしなく動いていました。

それをただ眺める事しかできない新人2人は、これから実習を教わる人たちに挨拶する為に向かいました。

親分はその実習の現場に到着すると「○○さんちょっといいか」といい、その教育係を呼ぶのでした。

そこには熊(以下熊さん)のような体躯の先輩が、椅子から立ち上がりこちらにやってきました。

「また怖い人にあたるのか」そんなことを思っていると、親分がその人に「今日から世話になるtmkっていう者なんだわ、実習中面倒見てもらっていいか?」と一言。

「初めまして!tmkと申します。よろしくお願いします」と気合を入れて言ったつもりが「ああ」と口数少なめに一言。特に喜ぶ様子もなく、気合を出しすぎたのかと少し後悔。

「社会にはいろんな人がいる」と思った瞬間でした。

「あとは頼むぞ」と親分は熊さんに私を託して、「○○はこっちなと」と親分に同期は連れていかれていきました。これで同期とは離れ離れになり心細くしていると熊さんが「じゃあこっち来て」と一言。

それで徒歩の先に、私の担当する検修場所がありました。台車の枠が並べられて、作業員の方が忙しそうに作業していました。

暫くすると皆が集まってきて、配線の作業をしていたので熊さんが「ちょっと新人来たから、あいさつしてもらうから聞いてくれや」ということで

「○○から来ました、tmkです。よろしくお願いします」とあいさつすると皆が「よろしくー」と一言。ベテラン層の方が多くて、若手がいない班でした。

反応があって良かったと思うと安心してたら、熊さんが「はい」といきなり私に配線を差し出してきました。

「え?え?」と思っていると別な先輩から「配線の接続作業すっから、ちょっと見て覚えて」と言われるがまま見ていたら熊さんから「早速やるべな」ということで配線をひたすら繋げる作業を行いました。

仕事が出来なくても

「早速やるから、ここ座って作業して」と言われるがままに座り作業を始めようとしても、配線の接続なんて深く学んできていない素人なので当然うまくいきません。

工場は検査工程で期間が組まれているので、時間は限られています。当時はそこまで厳しい期限ではありませんでした。期間に間に合わないと残業の可能性があるのでダラダラと作業するのもダメなのです。

その作業工程を私が遅らせる訳にもいかないので、挨拶して数分でできるわけがありません。とにかく見よう見まねで作業して、完成させることに必死でした。作業でわからなければ、先輩に繰り返し質問して覚えていくのでした。

配線接続作業は、ほかの作業に比べて仕事といえるレベルの作業ではなかったです。

振り返ると大した仕事ではありませんでしたが、整備の仕事に携われている充実感がありました。検修作業は大変だけど新しいことを覚えるのは、とても楽しい事なんだと気付くのでした。

実習中の新人は、点呼前に所長と1日を振り返るのですが、所長が不在だったので親分にその日の挨拶をします。

「今日はどうだった?」と親分が聞いてくるので、「初めて現場で実習出来て新鮮でした。仕事してるなって感じがしました。

すると「また明日からも頑張れ。点呼忘れんなよ」と朝の雰囲気と違い、少しうれしそうに少し話して振り返りは終了しました。帰り道は同期と今日の仕事の話を交えながら、実習初日を終了するのでした。

以上で実習編のお話は終了します。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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