プロへの第一歩 職人編

このプロへの第一歩は新入社員時代に経験した、車両整備の実習による成長記録を書いています。詰め込み教育で台車実習が終わったと思ったら、次は車両本体の内装関係を扱うぎ装職場で新たな実習が始まりました。

雰囲気が全く違う職場

以前のプロへの第一歩 実習編で述べた職場の洗礼に怯えながら、新たな実習先へ挨拶の為に向かいました。そこは車両の内装やドアを検修するいわゆるぎ装職場。台車の床下に就いている走り装置とは違って、今度は車両本体を修繕するのです。

「また強面の人が来たら嫌だな」と高校を卒業したばかりの18歳はそう思っているのでした。そして職場に到着後、部屋に入ると所長が私たちを出迎えてもらえました。

以前の台車検修とは明らかに雰囲気が違うのです。強面の人が前と違っていないでのです。どこに行っても親分みたいな人しかいないと思っていたので、違和感しかありませんでした。

挨拶を簡単に済ませ、職場の概要説明と注意事項を聞いた後に職場見学に向かいました。ぎ装工場では車体が部品を外された状態で置いてあり、普段使っている電車がばらばらにされ、ボディしか残っていませんでした。

辺りを見渡しても作業している人があまり見当たりません。車内に入っているのか、外から見ている限り人は見当たりません。どこで作業しているのだろうかなどと、考えながら歩いていると職場見学が終了。いよいよ実習開始です。

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職人集団の仕事ぶり

実習を始めるために仕事場所まで、上司に連れられ向かいました。案内をしてくれる上司はもの静かな雰囲気の方だったので、びくびくする必要はないことに安心していました。

そして現地に到着し、実習を担当してくれる皆さんへ挨拶。5人のチームは皆さん優しそうな雰囲気で安心しました。「まあとりあえずお茶でも」とお茶まで飲ませていただき、ゆっくりした雰囲気から始まるのでした。

「ここならあんな強面にびくびくせずやっていけるぞ」とそんなことを思っていました。しかしそんな期待は、簡単に打ち砕かれてしまうのです。お茶を飲み干して、作業を始める為に先輩に連れられて仕事場へ向かいました。

車両の部品が外されてボディだけの状態になっている電車が置かれている作業場で、ついて行くと作業打ち合わせをしていました。「今日はドアの改修と、内装取付作業です。階段などの上り下りやカッターナイフなどの使用で怪我せぬよう十分注意して作業しましょう」と工程の打ち合わせが終了し作業が始まりました。

仕事を教えてもらうため、先輩についていくと出入りするドアの枠を付ける作業でした。早速先輩がお手本を見せてくれました。「こうやるからよく見ててね」と言われるがまま作業を見ていました。

その先輩が工具を持った瞬間、素早いドライバーの扱いによって、数十本もあるネジをどんどん締めていきます。こんなペースでネジを締めていくのかというぐらい、素早い工具裁きです。

あっという間にネジの締付が終了して、次の作業に向かうのです。私はあまりのスピードの速さに唖然としていました。まるで工具という生き物をさばくその素振りに「俺とおまえは違う」と明らかに技術の差を見せられた瞬間でした。

そしてもう一つのドアへ移動して、工具を渡されて「じゃあさっきの要領でネジを締めていってね」と言われいきなり先輩は別な場所に行ってしまいました。私はいきなり工具片手に、ドアの枠を付ける作業を任されてしまったのです。

ひたすらドライバーを使って先輩の見よう見まねで、ネジを締め付けていくのですが、ネジがうまく入りません。何度もネジを床に落とし、探してはまた締め付けるを繰り返していました。

トラブルなんていざ知らず

さっきまでの先輩の動作は一体何だったのかと思っていると、ネジが斜めに入ってしまいました。焦る私に他の先輩がやってきて『あーそういう感じね』というと何やら別な工具を使ってネジ穴に何か差し込んでいるのです。

それは「タップ」と呼ばれるもので、ネジ山を修正する道具でした。その先輩はいとも簡単に穴にタップを差し込んでいって、ネジを修正してくれました。皆さん動きが速いことに唖然としながら作業を続けていき、ドアの枠を付けるのに長時間がかかってしまいました。

先輩から「まあ最初はそんなものよ」とフォローしていただきましたが、先輩たちの技術にはいつ届くのだろうと感じてしまうぐらい技術の差を見せつけられた瞬間でした。

ガラスを取り付ける作業で、シール材を打ち込むのですが、シール材がうまく入れられなくて悪戦苦闘していたら、ノズルが外れてガラスに接着剤を付けてしまったり、ネジを締めたら締めすぎてネジを折り先輩たちと救出作業で時間を取らせたりと短時間の間に失敗だらけで、チームに迷惑かけてばかりでした。

熟練された技術と判断力の速さに驚くばかり、私のできないことを先輩たちはいとも簡単にやってのけていく姿がとてもかっこよく私の目に写りました。ここでやっとわかったことがあります。

この職場は技術をもって仕事で見せる職人集団だったのです

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技術はもったいぶらない

恐ろしい職場に来てしまったと感じると共に、台車の強面集団とは全く違うキャラクターに驚くばかりでした。とにかく持っている技術力は桁違いのレベルに洗練されていて、先輩たちの凄さが伝わりました。

とにかく器用な人が揃っていて、何を聞いても「ここをこうしておけば大丈夫」と嫌がらず教えてくれました。特に接着剤の後処理が綺麗すぎて、私が何度も何度もチャレンジしてもうまくいきませんでした。

落ち込んでいると「繰り返しやってればできるようになる」とフォローしていただきました。色々作業をやらせてもらってるのに、短期間しかここで過ごせないのはもったいないと思っていたので、ここで修行して良い技術を身に着けてから基地に戻りたいと勝手に考えてました。

凄い人達と仕事が出来た充実感と共に、不器用すぎる自分に嫌気もさしましたがお世話になった先輩達に少しでも近づけるように、頑張ろうと18歳の新入りは意気込むのでした。

残された短い実習期間で仕事に打ち込んでいるうちに、教育カリキュラムの実習課程はあっという間に終了。いよいよ車両基地への異動日が近づいてきました。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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